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【一巻】『ポーの一族』の印象に残った箇所を引用する

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萩尾望都ポーの一族」が宝塚で舞台化するらしい。

萩尾望都氏の不朽の名作『ポーの一族』、宝塚歌劇にて舞台化 | ORICON NEWS

 

とのことで、

読み返してみる。

 

あらすじは以下。

 

1880年ごろ、とある海辺の街をポーツネル男爵一家が訪れた。ロンドンから来たという彼らのことはすぐに市内で評判になった。男爵夫妻とその子供たち、エドガーとメリーベル兄妹の4人は田舎町には似つかわしくない気品をただよわせていたのだ。彼らを見たものはまるで一枚の完璧な絵を見るような感慨にとらわれた。実は、その美しさは時の流れから外れた魔性の美。彼らは人の生血を吸うバンパネラポーの一族」であった。市の外れに家を借りた一家は、人間のふりをしながら一族に迎え入れるべき者を探し始めた。そして、エドガーが興味をひかれたのが、市で一番の貿易商の子息であるアラン・トワイライトだった…。

amazonより)

 

切ない吸血鬼の物語です。

 

いくつか好きな箇所を拾ってメモしたので、ここに写しておきます。

 

 

取り敢えず、一巻だけ。

 

 

以下ネタバレありです。

 

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「兄さま またそのクセ バラを折らないで かきキズだらけよ」

 

「ぼくの血をのむ?」

「悪いわ…  このところいつもだもの…」

「たおれるまで がまんせずに そういいなさい…   ぼくはいいんだから」

 

「きみはどのクラス? 最上級? おなじクラスで勉強できたらいいな」

「じゃまだよ」

「だれ ゲーテか   エッケルマンを読んだ   彼がゲーテをなんていったか 知ってる?」

「まあね  きみが学校のこと 色々教えてくれるならーー」

「じゃ 教えてやる ぼくがじゃまだといったらどくんだ! ぼくが右を向けといったら右を向くんだ! ぼくが声をかけるまでおとなしくしてろ 話しかけたりそばをうろついたりするな!  これがこの学校のぼくの規律だ  したがえ!」

「アラン・トワイライトの規律…?  上段にかまえて なにをしようってんだい  バカらしい…」

 

「ぼくがひとこといえば」

「へえ そう つまりひとりではなにもできないわけか」

「ぼくにそんなくちを……」

「きいたらなんだい 気にくわないやつなら ぼくならこの手でしまつをつける    ふ もうすこしましなやつかと思ってたが    バイ! 家で妹のおもりをしていたほうがずっと意義がありそうだ」

 

「へえ この町の医者は 女性に親切なんですね」

 

「…最初はネクタイ 次はハンカチ せわのやけること   ちゃんと拭くの  そのハナの頭も! せっかく妹を紹介しようとつれてきたんだから… 男まえのとこ見せたいだろ!」

 

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「兄さんだけよ! いつもわたしのそばにいて いつもわたしのこと考えてくれるの   ずっと小さなころからそうよ   ずっと小さなころから」

 

きみはだまってそこにいる なにもいわずとも そしてわかってくれるーー

 

「母さま…きれい」

「そりゃクリフォード先生も 一発でまいるね」

 

「すこしうとうとしていたらしい …   夢を見てた」

「夢? いい夢?」

 

「みことばや 十字架や 塔を恐れるな そんなものは単なる象徴にすぎん」

 

「恐ろしいのは …  信仰だ    われわれをふくめ いっさいの異端を認めない心  これは邪悪なものだ! これはうそで実在せぬものだと 狂信している精神は恐ろしい」

 

「…ぼくはただ…ただきみにキスしようと思っただけさ」

「首すじに?」

「…だから きみがあんまりしょぼくれてたんで からかったのさ」

 

とにかく今は 助かった  感謝します  ……神さま

 

「布をもってくる… ふかなくちゃ」

「いいよ ここにいて    ごめん きみがぬれる」

「どうしたの なにかあったの……」

「ぼくが プロポーズしたらおこる?」

 

「ごめん! どうかしてたんだ…  いきなりごめんよ 困らせて…  でもきみが好きなのは ほんとうだよ  ……好きだ」

 

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「雷がこわいんですか シーラ夫人」

「ええ…まるで……  わたしにむかって走ってきそうで……!」

「罪人のようなことをおっしゃる」

「ああ  いや  気をそらせて ほかの話をしましょうよ…」

 

「信じる? なにを!」

「悪魔を!」

 

あれも神のつくりたもうたものか?  …なんのために!

 

「メリーベルの悲鳴が外まで聞こえた    …ぼくは まにあわなかった…」

 

「…悪霊…! 消えろ…! おまえたちは実在しない!」

「実在している    あなたがたよりはずっと長い時間を…… なにかいいのこすことは?」

「消えろ! おまえたちは なんのためにそこにいる  なぜ生きてそこにいるのだ この悪魔!」

 

幕だ  すべてはおわった!  ぼくは自由 ぼくはこの世でただひとり もうメリーベルのために あの子をまもるために生きる必要もない  生きる必要もない……

 

「…あ…メリーベルリーベル ……だれか……  たすけて…! メリーベル…!」

「メリーベルは もういないよ」

「メリーベルはどこ?」

「知ってる? きみは人が生まれるまえにどこからくるか」

「知らない…」

「ぼくも知らない だからメリーベルがどこへいったかわからない」

 

「おいでよ……  きみも おいでよ ひとりではさびしすぎる……」

 

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「そんな必要はない  メリーベルが死んだら あなたを殺す  メリーベルが無事ならあなたも 無事に帰してあげる」

 

「どうぞ明日はお帰りください   人間として 神のさだめられた数十年の命を まっとうしてください」

 

 「あなたはメリーベルを撃ち殺そうとしたんだ! 天にも地にもたった一人のぼくの肉親 ぼくの妹 ぼくの愛! メリーベルのためにだけ ぼくは生きてるんだ メリーベルのためにだけ!」

 

「責任をとると言ったね  とうぜんだろう!」

 

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うそつきのトニー うそつきのトニー

たくさんの約束をして 幸せの約束を残して うそつきのトニー

 

「ママ! ママ だめよ ママ」

「アンナ アンナ どうしたの ママ なにもしませんよ アンナ」

「とびこむのかと思ったの こわがらせないで こわがらせないで」

 

 「…ママ わたしがいるわよ  わたし一生ママのそばにいるわ  どこにも行かない  ママを一人にしない  パパや姉さんたちのように 行ってしまわない」

 

幸せは とどめておけないものかしら  ほんの少しだけでいいから  時がうつり 人々は生きて死に 歴史の流れを歌い 歌い…  ほんの少しでいいから

 

「生きて行くってことは とてもむずかしいから ただ日を追えばいいのだけれど 時にはとてもつらいから 弱い人たちは とくに弱い人たちは かなうことのない夢を見るんですよ」

 

「いっちゃいやだ! いやだーー  いかないで! きみが好きだもの!」

 

ぼくは どれほど あの子を愛したろう

 

アラン! 目を!   ぼくは一人で思い出ばかりを追いすぎる    ーーなぜ目をさまさない  きみをつれてきたのがまちがいだったとしても ぼくが生きてはいけないものなのだとしても たのむから目をさましてーー

 

「でも ぼくがわかるね」

「うん」

「ーーぼくたちが ながい旅に出ることもわかるね」

「…うん」

 

「だあれ…!? 」

「ああ あんまりきれいなので」

「花どろぼうは 罪にはならないわ ほしければ 切ってあげましょう」

 

「さあ こちらへ来て 一曲歌って とりこになったユニコーン    これは知ってて?」

バラを切ってくれるのではなかったの? 一声に一本だよ」

「いくらでも」

 

なんて幸せそうに笑うご婦人かし ぼくがどこのだれか 聞きもしないで

 

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「ねてたの?」

「うん  わ いいにおい   一本」

「だめ 家へついてから」

 

バラをくださる?」

「ええ いくらでも」

 

「あなたは好きなものばかりなのだね  なにもかも好きでたのしくて 幸せそう」

 

「まあ…! エドガー!  この雨ではだれも来ないと思ってたわ  家は近くなの?」

「ぼくはとらわれの身の一角獣だから」

 

「あの人 あなたに何度もプロポーズしてるって聞いたよ エルゼリ   でもあなたは恋人にすてられたはらいせに 独身でいるんだって うわさ  ほんと?     そら あなたはまた笑う     話してよ」

 

「…毎日じゃない  そんなにあの人がいいの?  たまにはーー  家にいたってー」

「きみも来ればいいさ」

「だれが…!」

「やさしい人だよ  仲間がふえるの喜ぶよ きっと」

「ガキと年増とピーチク歌えるかい おかしくって…!」

「じゃ 一人で待ってろよ」

「ぼくのことなんか どうだっていいんだ どうせ  メリーベルのかわりだものね!」

 

なぜそう 幸せでいられるの  愛する人がそばにいないのに

 

おぼえていなかった!  むりもない 十年もむかしの ひと夏だけの恋人なんて  エルゼリ エルゼリ 幸せなひと 幸せなひと!

 

悲しみも憎しみも それらの心は行き場がない  わたし弱虫  そんな感情にはたえられない   だから あの人を愛していたいの  それだけで幸せでいられる

 

「なぜそう 幸せでいられる?」

「なぜ幸せでいられないの?」

「……たとえば…妹がいない  妹がいない   あの子はどこ? 思いおこすだけで 幸せにはなれない どこに行ったんだろう  また 生まれてくる?」

バラをつんだのは 妹さんのためだったの?」

「あれは友人に  でも彼は妹じゃない」

「…これが愛でね  手を伸ばせば届くの   あなたの愛 あなたの妹の愛   行き場があるのはいいわ   バラをうけとってくれる人がいるのは いいわ」

 

ムシがよすぎる エルゼリ  あなた 自分のためにだけ生きて

 

「リデルを追い出さないわね」

「リデル 追い出しゃしないよ」

「リデルをきらいじゃないわね」

「リデル ちっとも!」

 

彼らはそのままなのだ  わたしだけが年ごとに年をとり  だから彼らはわたしを見はなしたのだ  わたしだけが年をとり

 

「そんな 泣かせるつもりなかったんだよ きみがお人形みたいなもんで…  スカートの中も人形と同じかなって…  ごめん 泣きやんでよ」

 

「どうしたの  ーーピクニックはつまらない カレン?」

「そんなことないわ あたし 楽しみで…  でも」

「でも?  おしゃれしてきたんだね とてもかわいいよ」

 

「カレンが好き?」

「きみだってすてきだよ」

 

「いったいどっちが好きなの」

「どっちも」

「そんなのずるいわ」